整形外科ナースは転職したくなる法則

看護短期大学を卒業し、私が新入社員として就職したのは大手企業が経営する400床ほどの病院でした。この病院は付属の看護学校が併設しており、私の年から外部からの入職を受け入れていました。つまり私は外部入職の第一期生です。

配属先は大腿骨などの骨折、脊椎の手術を主に行っている整形外科病棟でした。看護形態は業務別看護、3交代制。

さすがは大手の企業病院だけあって、教育体制はとても手厚く、福利厚生もよかったです。入職後にはプリセプターが基本的なことを一から教えてくれ、これから看護師として成長していける、そう思っていました。確かに初期教育は十分にあったと思います。でも、優しかった先輩たちが徐々に本音を出しただしたのは、私が独り立ちをして、一人のメンバーとして夜勤をするようになってからです。

先輩たちの口癖は、何でそんなことも知らないの?根拠は?だから大卒は使えない。同じ学校で看護の基礎から学び、この病院で実習をしてきた先輩たちにとっては、この病院のやり方、伝統的やり方が常識であり、違う看護論を主に学び、いくつもの病院で実習をしてきた私達が外部者が間違っているように感じたのです。中には、教科書で、昔は主に使用されていました。

と書かれているものがあったり、辞書やインターネットで調べても出てこないような言葉もありました。なぜこれを使うんですか?なんでこう呼ぶのですか?そう質問すると、そう決まっているから。私には何でも根拠を求めるのに、先輩たちは根拠のないルールの中で仕事をしている。納得いきませんでした。そして一番しんどかった夜勤では、3年目まではコール対応とトイレ介助、食事介助といった日常生活援助のみでした。整形外科の予定手術は基本的に他に大きな疾患がない方です。

それでも高齢者の手術後はADLが急激に低下し、生活のすべてに介助が必要となります。術後譫妄を起こす方も少なくありません。他科に比べると、比べ物にならないくらいナースコールや、センサーコールが多いのです。

35床のうち50%は一人でトイレに行けませんが、リハビリのため、トイレ排泄を促します。そこで大変なのが、若い看護師のコール対応です。先輩ナースは決してコールをとりません。なぜなら、コール対応は下っ端がする仕事、と決まっているからです。

夕方、食事前後から就寝前、早朝は、ナースコールと連動しているPHSは鳴りっぱなしです。しかもまた「決まり事」で、ナースコール越しに要件を聞いてはいけなかったのです。コールが3件、4件たまり、汗だくになって廊下を走りまわり、患者さんに、遅くなってすいません。

と謝り続けるころ、先輩たちはコンパの話で談笑しています。対応が遅くなってトイレに間に合わなかったり、センサーマットに反応にいち早く駆け付けることができず、患者さんが転倒してしまう、そんなこともありました。珍しい病態の患者さんが来たとき、私も勉強のために見たい、といったら、新人のくせに生意気だ、と言われました。この病院は完全に年功序列、体育会系、伝統にとらわれる病院でした。私は看護をしているのか?介護をしているのか?そんな思いをもってただ毎日息を切らしてナースコール対応をする日々。

でもきっと先輩たちはもっと重要な業務をしているんだろう、そう思って3年は頑張りました。そしてようやく他の仕事をさせてもらえるようになったとき、愕然としました。リーダー業務の少なさ。そして看護計画の単純さ。他の病院に転職し、はじめて看護の楽しさ、学ぶことの嬉しさ、チームワーク、看護は医師や他メンバーと協力してやるものだと学びました。

企業病院で過ごした3年は、古い時代の体育会系の部活のようでした。患者さんの安全第一であるはずの看護が、部活の1年生いじめをたのしんで見ているようだった現場。やめて正解だったと思います。